天職・やりたいことを見つけ方の専門 簡単で面白い心理学のコラム

事例7「海の技術屋さん」


天職探しカウンセリング事例集

事例7 「海の技術屋さん」

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事例7


昔から自分の好きなことを、

できるかどうかは別にして、

原点回帰して考えてみる。


また、日々の仕事の中、

我慢ばかりするのではなく、

自分の気持ちも大切にする。


それが心満たされて働くため、

とても大切なことを教えてくれる事例です。




□自分の本音の本音を大切に。




30代半ばの、

真面目で誠実そうな男性。

家電メーカーに勤めるTさん。



Tさんは丁寧に話し始めます。



「今まで3回も転職をしてるので、

 次の転職はどうしても失敗したくないんです。



 もう、年齢的なものもあるし…、

 転職は次で最後にしたいんです。


 だから、ここらでちゃんと考えて、

 やりがいや生き甲斐の感じられる仕事を

 見つけなきゃいけないと思うんです。


 それで次こそは、

 本当にやりたいことを見つけたいと思って、

 相談にこさせてもらいました。」



3回という転職回数に対して、

すこし後ろめたさがある様子です。


ただ、僕の最初に受けた印象としては、

決していい加減な感じの方ではなく、

真面目できっちりとお話のできる方です。



いまの仕事を辞めたい理由についても、

職場環境の方に問題があるようです。




「今は技術系の専門職をしています。


 自社の商品を検査する仕事なんですが、

 まあ…、やっぱり

 検査結果が良くないこともあるんです。


 どうしても検査の結果が良くないと、

 あら探しをしているみたいに思われて、

 社内で嫌な顔をする人もいるんです。


 それが自分の仕事なんだし、

 これはこれで大切な仕事ではあるんです。

 でも、やっぱりやるせないというか。


 やっぱり、こう…、

 人に喜んでもらえる仕事の方が

 いいなと思うんです。」
 
 

ここから少し話しにくそうに、

職場環境の話をされました。




「それから…、

 人間関係にもちょっと問題があってですね…。


 今の上司なんですけれども、

 かなり無理難題を押しつけてくるんですよ。


 あまりに無茶苦茶なんでできないというと

 なぜかこっちが怒られたりして…、

 それが毎日のように続いて、

 もうね、まさにパワハラという感じなんです。



 その上司と強くつながってる人間もいて、

 その二人で職場を支配しているんです。


 その上司は外から来た人間で、

 いまの仕事をあまりわかってないんで、

 そうやって地位を守ってるのかもしれませんけど…。



 うう…ん、そういうことが続いていて、

 社内にいるだけで息苦しくなって…。

 社内にいてられなくなる時もあるんです。


 でも、あまりに酷くてそれが長く続くんで、

 私も何度かキレたことがあるんです。

 それからちょっとマシになったりして。
 


 それに自分も何度も転職したくないし、

 家族もいるから簡単には辞められないし、

 そういう上司の下でもうまくやっていくために、

 なんとか毎日、本当に必死に我慢して…。


 辛いからって辞めるのでは、

 逃げるような転職になってしまうし…。



 自分でも努力できることをしようと、

 本をいろいろ読んで人間関係を勉強したりして、

 ほんの少しマシになってはきたんですけど…。


 でも、ほんの少しマシになっただけで、

 やっぱり職場にいるのは苦しくて苦しくて。」



Tさんはわりと、

淡々と冷静に話される方ですが、

この上司の話になった時には、

非常に感情が表に出てきていて、

強い怒りや悔しさが伝わってきました。




辛く辞めたい気持ちもすごく伝わってくるし、

なんとかしようと自分なりに努力してきたことも、

僕にはすごく伝わってきました。



「うん…、お話を聴かせてもらってると、

 職場の環境が本当に酷いようですね。


 ただ、思い切って上司に感情をぶつけたり、

 自分なりに人間関係で努力して、

 少し改善してきてるところもあるんですね。」



「まあ、少しマシにはなってるんですけど、

 いずれにせよこのままずっと、

 この職場にいるのもなって思います。


 それにやっぱり仕事内容そのものにも、

 あまりやりがいや魅力がないんで。



 せっかくたった一度の人生ですから、

 やりがいを感じる仕事をしてみたいんです。


 一番最初の会社を辞めた時、

 好きなことを仕事にしようと本気で思ったんですが、

 それは全く未経験の仕事になるんですよね。

 
 未経験よりは今までと同じ職種や業界の方が

 転職しやすいっていうじゃないですか。


 それで今までと同じような仕事に転職したんですが、

 結局は3回も転職することになって…。


 それで今回は、今度こそ

 好きなことを仕事にした方がいいのかなって。

 ただ、本当にそれでいいんだろうかって…。」



職場環境はもとより、

仕事内容そのものに対しても、

強い疑問がある様子です。



ただ、好きを仕事にすることへも、

本人の中に迷いがあるようなので、

その迷う気持ちについて、

もっと詳しく教えてもらいます。




「好きなことを仕事にすることに、

 本当にそれでいいんだろうかっていうのは、

 どういうことなんですかね?」



「こう、本当にこれが好きなことで、

 ずっと追求していけるのかなって…。

 なんか漠然としているというか…。


 それよりも今までみたいに技術系で、

 もう少し違う勉強もして

 転職した方がいいのかなとか…。


 その辺が自分でも

 どうしたいのかよくわからないんです。」



この時点で漠然としてでも、

好きなことがあるのは、

かなり幸先のいいスタートです。


この時点で漠然としてるのは当然で、

そもそも好きなことがはっきりしてれば、

やりたいことがわからないと悩みません。



ただ、自分からは、

どんなことが好きかについては、

なかなか話し始めません。


自分の好きなことについて語るのは、

どこか気恥ずかしい気持ちがあるようで、

これはほとんどの相談者さんが同じです。


なので、好きなことについて、

こちらから教えてもらいにいきます。



「一つ質問させてもらっていいですかね。

 Tさんの好きなことってどんなことなんですかね?

 漠然としたままでいいので教えてもらえますか?」



「あの…、自然に関することが
 
 子供の頃から好きだったんですよ。

 虫とか川遊びとか。


 草むらにいる虫を捕まえたりとか、

 川にいる小さな魚を捕まえたりとか、

 そういうとこにいる動物とか。


 子供の頃はそういうのが

 好きだったなっていうのがあって、

 大人になってからはたまにですけど

 そういうとこに行くとやっぱり楽しいなって。


 それで1度目の転職の時に、

 そういうのに関わる仕事に就けたらなって

 そう思ってたんですけど…。


 全く未経験の仕事になるんで、

 無理なんじゃないかなって思ったりして…。


 それで結局、今と同じような

 技術系の仕事に転職したんですけど…。



 そういうのであきらめてしまうんだったら、

 本当はそれほど好きじゃないのかなっていう気もして…。


 ただ、いまの仕事が辛くて逃げたいから、

 自然に関わる仕事したいのかなって、

 そんな気にもなったりするんです。


 そうすると自分でも

 よくわからなくなって…。」




やはり未経験の仕事に就く不安が、

とても大きいようで、

それは当然のことだと思います。


また、世間一般では、

「未経験の仕事に就くのは難しい」、

「資格が無いなら難しいですよ」、

といわれることも多いようです。



普通の転職、面接対策としては、

就職活動の有利不利を考えるなら、

確かにそれは一理あると思います。




ただ、やりたいことを見つけ、

好きなことを仕事にすると考えた場合、

ほとんどが未経験の仕事で当然です。

今の時点で資格が何もないのも当然です。



「未経験、資格がないからやめておけ」では、

結局、今までと同じ仕事しか選べず、

やりたいことを考える心の余裕が生まれません。



なのでうちのカウンセリングでは、

未経験だろうが資格が無かろうが、

まずは本人の好きだと思ってることを、

とにかく深く聴いていきます。


Tさんの場合でも、

Tさんがどんなふうに自然が好きなのか、

もっと深く知りたいところです。


そこでもう少し詳しく聴いてみます。



「またちょっと教えてもらいたいんですけど、

 実は僕、大阪市内で育ったんで、

 あまり虫とか自然とかよく知らないんですよ。


 自然のどういうところが面白かったり、

 どんなところが好きなんですかね?」



たいていの場合、

好きなことについて少し話し始めると、

どんどん話が出てくることが多いです。


ただ、僕たちは今までの人生で、

自分の好きなことについて、

真面目に無批判で聞いてくれることが、

普通に生きているとほとんどありません。


なので僕たち自身も好きなことを、

真剣に人に語ることがほとんどないので、

自分でも好きなことってよくわかってないのです。


だから好きなことを真剣に人に聴いてもらったり、

聴いてくれる人がいないなら、

頭に思い浮かぶままに、

紙に書き出してみるのも大切です。



Tさんも自然についての話を、

とてもイキイキとたくさん話してくれました。



草むらにどんな虫がいるのか、

川にどんな小魚がいるのか、

それをどうやって捕まえるのか。


都会育ちの僕にとっては、

なかなか新鮮で面白い話なので、

興味を持って聞き入ってました。


他の相談者の場合でも、

その人の好きなことに関する話は、

僕にとっては全く知らない世界のことで、

面白い話のことがほとんどです。



Tさんの事例では、

そうやってたくさん話しているうちに、

すごく大切なキーワードが出てきました。




「虫を捕まえたりとか、

 川の小魚を捕まえたりして、

 子供なんかに見せたりすると、

 本当にすごく喜ぶんですよ。


 そういうことがあると、

 ああ、やっぱりこういうのいいなって思って。


 水族館とかで働けたりしたら、

 すごくいいんだろうなって思うんです。

 まあ、ただの理想なんですけどね。」



Tさんは「ただの理想」といいますが、

その理想をかなえることこそが、

天職・やりたいことを仕事にすることです。


夢でも理想でもいいから、

「こうなれば最高なのに」というのを、

思い切って口に出してみることが、

やりたいこと探しには大切です。



『水族館で働けたら理想』、

そんな理想を意識できたことは、

ある意味、一歩前進です。




ただ、この時点ではまだ、

本当に自然が好きなのかどうか、

Tさん自身が感覚的に自信がありません。


だから、

「本当に自然に関する仕事でいいのか?

 今までどうり技術系の仕事で、

 転職した方がいいんじゃないか?」、

と迷いが生じているのです。



でも、ここまできたら、

頭の中で考えるだけでは、

進展がありません。


ここからは、

体で考える必要があります。




「もう一つ教えてもらっていいですかね?

 ここ最近って、

 自然のあるところにいってますか?」


「いや~、ここ最近は、

 ずいぶん長い間いってないですね。」



感情は時間がたてば薄れます。

長い間自然に触れてないのであれば、

好きかどうか自信を無くして当然です。


好きかどうかは

頭で考えてもわかりません。


実際に体を使って

感覚で確かめるしかありません。




そこでTさんに、

ちょっとした宿題を出すことにします。



「自然に関する本を、

 パラパラとで構いませんので、

 一日一回開いてもらっていいですか?


 真剣に読む必要はありません。

 気軽にパラパラ見てもらえれば、

 それだけで十分です。」


「まあ、それくらいなら全然大丈夫ですよ。」



宿題で大切なのは、

簡単にできて楽しいことであること。


難しくて楽しくない宿題を出しても、

やってくれないことの方が多いです。



そして、さらに良くないのは、

「宿題もしないくらいなんだから、

 やっぱり好きじゃなかったんだ…」、

とよけいに自信をなくすことです。



だから宿題は、

簡単で楽しくあること。

それがすごく大切です。


宿題も、楽しいことなら、

やろうと思いますからね。



「あの、本を見るくらいなら、

 大丈夫だとは思うんですが、

 たったそれだけでいいんですか?」



いつもならこれだけにしとくのですが、

Tさんに余裕がありそうなので、

ここは強気にもう少し宿題を出してみました。



「では、できる限りでいいんですけど、

 休みの日に自然のあるところに、

 出かけてもらっていいですかね?」


「ああ、それも大丈夫だと思います。

 なんか楽しそうですね。」



自然のあるところに、

一日かけて遊びに行く。

いってみれば大人の遠足。



休みの日にちょっと遠出して、

大人の遠足に行ってみるだけの宿題。



ところが、この強気に出た宿題が、

予想以上によい結果を出しました。


前回のカウンセリングで、

自然に関する本を読み、

大人の遠足に行くことになったTさん。



自然に関わる仕事に就くべきか、

自分でもよくわからないとのことでしたが、

大人の遠足にいった後は大きな変化がありました。




「いやあ、

 やっぱりいってみると、

 楽しいものですね。


 この一ヶ月の間に、

 ちょっとした山とかに、

 3回ほど出かけてみたんですけど、

 すごく楽しかったです。



 それで出かけたとき、

 水族館の前にも通りかかって、

 本当は水族館も入りたかったんですけど、

 冬休みで子供連ればかりだったんで、

 中年の男一人では入りにくかったんですよ(笑)

 
 次はうちの子供も

 一緒に行けたらなと思います。


 今度はもう少し遠くに行けように、
 
 計画してるところなんですよ。」



とてもリラックスした様子で、

明るく楽しそうに、

宿題の話をしてくれました。



そして宿題をやってみて、

新しく気づいたことがあるそうです。



「実際いろいろやってて気づいたんですけど、

 水族館とかの仕事には水質管理とか、

 そういう仕事ともあるよなって思って。


 水質管理とかなら、私の今までの経験や技術も、

 すこしは役に立つ部分もあるかなと思うんです。


 まあ、まだ、本当に

 そういう仕事があるのかわからないし、

 自分の技術が役立つかわからないんですけど…。


 でも、そういう仕事が

 あるかもしれないって気づくと、

 なんか光が見えてきたっていうか、

 すごくやる気が出てきたんですよね。



 うん…、まだはっきりとじゃないですけど、

 動物とか自然に関する仕事、

 そういう中で今まで勉強してきた技術とか、

 今までの経験を生かせたら、

 一番いい形なんじゃないかなと思うんです。」



Tさんは希望のある目で、

お話ししてくれました。



大人の遠足に行ってみる。

そこで自分はやはり、

自然が好きだと確認できた。



それだけではなく、以前は

「未経験だから無理…」と思っていたのが、

自分の技術を生かせるかもしれないと、

大きく物を見る視点が変わっています。


「行動してみて、

 初めてわかることがある」、

 とよく言います。



でも、実際は、


「行動しないと、

 ほとんどのことはわからない」。


こっちが正解だと思います。



さて、この2回目のカウンセリングでは、

職場の辛さについては、

あまり話題になりませんでした。


もしかしてこれについても、

なにか良い変化があったのではと、

期待して聞いてみました。



やりたいことへの光が見えると、

つられて他も改善してくることが、

なぜかよくあるからです。




「今回は職場の話があまりありませんが、

 なにか改善があったんですか?」



「いや、まったく良くなってません。

 いまはたまたま仕事量が少ない時期なので、

 それでちょっとマシなだけです。


 辛いからって逃げちゃいけない、

 我慢しなきゃいけないと思って続けてるだけで、

 仕事が辛いのには全く変わりません」



これについては非常にきっぱりと、

強い口調でおっしゃいました。


やはりそんなには甘くない。

簡単にすべてが、

うまくいくわけではありません。




とはいえ、

やりたいこと探しについては、

非常に順調に進んでいます。


この流れを崩したくないので、

今回も前回と同じ宿題です。


大人の遠足に出かけることと、

自然に関する本を読むこと。


それから本人の希望で、

自然に生かせる技術の本も、

読んでみることになりました。



それから2ヶ月ほどして、Tさんから、

3回目のカウンセリングの予約が入りました。



自然のあるとこへ出かけること、

自然や技術の本を読むこと。


宿題は今回も、

とても楽しかったそうです。




でも、やはり不安はあります。


「あの…、動物とか自然に関われて、

 今までの経験や技術を生かせれば、

 一番いいとは確かに思うんですが…。


 本当にそれで食べていけるのかとか、

 それが本当にやりたいことなのかとか、

 やっぱりまだ不安があるんですよね。


 実際にそんな仕事があるのかどうか、

 よくわからないですし…。」



この段階では、

不安も迷いもあって当然です。




「確かに、今の状況では、

 そういう不安はあって当然だと思います。


 でも、もし、そういう仕事があって、

 今のTさんの能力ならすぐ採用するといわれたら、

 どうしますかね?」


「そりゃすぐにでも飛びつきますよ!」



この言葉から見ても、

不安や迷いがあるとはいえ、

そういう仕事に就きたいことは、

間違いがないようです。




「でも…、実際のところ、

 次にどうしたらいいのか、

 よくわからなくて…。


 何をしたらいいのかわからないから、

 不安なんです。


 今までみたいに本を読んだりとか、

 自然のあるとこへ

 出かけるだけでいいんですかね?


 こういうことばかりやっていて、

 本当にやりたい仕事に就けるのかなって。


 なんかこれといったちゃんとした道筋というか、

 その仕事に就くための目標みたいなのもないし…。


 うん…、まあ、

 小さいことからやるしかないって、

 今はこういうことをやるしかないって

 それはわかってはいるんですけどね…。



 それに、自然に関われるというか、

 そういう仕事が見つかればうれしいんですけど、

 本当にそれで大丈夫なのかなとも思うんです…」



この不安もあって当然です。

もし本当に自然に関わる仕事に就くなら、

非常に大きなキャリアチェンジ。


まさに人生の大転換であるからです。

大きな変化には不安があって当然です。



また、大人の遠足や本を読むだけなど、

こんな小さなことばかりしていて大丈夫かと、

あせる気持ちもあって当然です。


「今、自分が何をするべきなのか?」、

それがはっきりしないことには、

やっぱり焦りや迷いがついてきます。



ゴールまでの道筋がはっきりせず、

ただ闇雲に進んでいる感じでは、

不安があって当然だからです。



特にこの段階では、

小さなことを積み重ねるしか無く、

1日2日で好きな仕事にすぐ就けるような、

大きな変化はまだ期待できません。


少し時間がかかる上に、

この選択が正解だという保証なんて、

誰もしてくれないのです。



だから不安で、

気持ちがブレるのです。



でも、

自分がやるべきことを決めるのは、

自分自身しかいません。


僕が勝手に決めたところで、

人の決めたことはやる気になりません。

それではやはり気持ちはブレるでしょう。



ところがその

やるべきことを決めるべき、

自分自身が迷ってるから、

困ったものなのです。



そこでここでは、

未来の自分の力を借りることにします。



「では、一つ、

 質問をしていいですか?



 Tさんの長所って、

 真面目に着実に努力できるとこですよね。


 大変な今の仕事をずっと我慢したり、

 我慢強いところもいいところだと思います。


 Tさんがそんな長所を最大限活用して、

 今からいろんなことを勉強して、

 他にも地道にいろんな努力を積み重ねたとします。


 そして、念願叶ってその仕事に就いて、

 イキイキと働いているのって、

 今から何年後くらいだと思いますか?」



Tさんはゆっくりと考えながら、答えます。



「え?ああ…、今から

 いろいろ努力してってことですか?


 う~ん…、2年か3年くらいですかね?

 うん、3年あったら大丈夫だと思います。」


「じゃあですね。


 ドラえもんって知ってますか?

 そう、そのドラえもんです。


 そのドラえもんのタイムマシンに乗って、

 がんばってその仕事に就いた、

 3年後のTさんに会いに行くとします。


 その3年後のTさんって、どこで、

 どんな服装してどんな顔で働いてますかね?」




「え?タイムマシンですか??

 う~ん……、そうですね…………。」



すこし沈黙の後、

ゆっくりと考えながら、

Tさんは答えます。



「場所は水族館とか…、そういうところです。

 髪型とかは、あまり変わってないです。

 服は…、仕事着ですね。スーツじゃなくて。


 表情は…、うん、あの、そうですね。

 こう、やりがいがある感じというか、

 目に張りがあるというんですかね。


 なんか活力がある感じです。
 
 うん、いい顔してると思います。」



「じゃあ、

 ここから少し変わったことを聴きますけどね。



 いろんな勉強や地道な努力を続けて、

 念願かなってやりたい仕事に就けたTさん。



 水族館のような場所で、

 今とあまり変わらない髪型で、

 スーツじゃない仕事着を着て、
 
 目に張りと活力のあるいい顔をして、

 やりがいもって働いている3年後のTさん。


 そのいい顔してる3年後のTさんに、

 今のTさんのこれからの仕事への不安や迷いを、

 どうしたらいいかと相談したとします。



 そしたら3年後のいい顔してるTさんは、

 なんて一言アドバイスしてくれますか?」




Tさんはしばらく黙り込みました。

深いところで感じながら考えている様子です。

しばらくして、ゆっくり丁寧に話し始めました。



「そう、ですね…。うん。


 お前が今やっているのは、

 自分自身のためになること、

 そしてそれが社会や

 他の誰かのためにもなること。

 
 今やっていることが

 正しいことだと信じてやっているなら、
 
 必ず道が開ける。


 だから信じてがんばってみろ…って。

 そんなことをいうと思います。


 うん、そうですね。うん。

 とにかく信じてやってみろって、

 そういうでしょうね」



「…うん、いい言葉ですね。

 正しいと信じてやってるなら、

 必ず道が開ける。

 とにかく信じてやって見ろ。


 3年後のTさんの言葉、

 すごくかっこいいですね。」



「本当ですね(笑)

 自分では恥ずかしいですけど、

 ぱっと口から出た割には、

 なかなかいい言葉ですね。」



「いまのTさんにぴったりの言葉だと思いますよ。


 あの…、いままで3回お話を聴かせてもらって、

 僕が感じていることなんですけど、

 自然が好きで、水族館などで働ければ理想的。


 今までの技術や経験を活かせればなおいい。

 そこは間違いないんじゃないかと僕は感じてます。」


「そうですね。

 私自身もそれは間違いないと思います。」



ここまで来たら心配ありません。

僕もそっと背中を押すことにします。



「では、一度、実際に

 そういう仕事を探してみませんか?」



「そうですね。よく考えてみたら、

 そういう仕事に就けたらとは思ったものの、

 今までちゃんと探してはなかったです。


 やってみたいのであれば、
 
 探してみた方がいいですよね。


 
 探してみて見つかればラッキーだし、

 もしみつからなくっても、

 どんな資格や能力がいるのかがわかれば、

 どうしたらいいかわかりますもんね。


 うん…、そしたら道筋や目標もできるし…。

 はい、早速、調べてみようと思います。」



この辺の行動力があるのも、

前向きに考えるところも、

Tさんの長所です。



「では、この辺で今日は終わろうと思うのですが、

 最後に何か質問とかありますか?」



このときTさんはとても大切なことを、

用意していたかのように質問されました。



「そうですね、あの…。

 今の会社について何ですけど…。



 逃げの転職にならないように、

 今まで何とか我慢してきたんですけど…。


 う~ん、やっぱり、

 嫌で嫌で仕方ないというか、

 ものすごく辛くてたまらないんですよね。

 

 これだけ辛いならもう辞めた方がいいのか、

 どうしたらいいですかね?


 まあ、貯金があるので、

 辞めてすぐに食べていけなくなるわけじゃ

 ないんですけど。やっぱり家族もいてますから。


 うん…、休日とかは平気なんですけど、

 もう、仕事の日になると、

 むかむかして頭が痛くなるんですよ。」


Tさんは、むかむかするといいながら、

胸のあたりをさすります。



「またちょっと変なこと聞きますけど、

 そのむかむかする感じって、

 どんな感じか今思い出せますか?」



一瞬、質問の意味に、戸惑った様子です。



「え??はい??

 …ああ、むかむかする感じですか?


 うん、お腹、いや、

 食堂っていうか胸のあたりなんですけど…。


 むかむかするっていうより、

 キューって締め付けられて

 空気を吸いにくくなる感じです。


 いや、

 実際に息ができないんじゃないですよ。」



Tさんは今度は、

胸のあたりを締め付けるように、

仕事に行く時の身体感覚を話します。



「うん、うん、はい…、なるほど。

 こう、胸のあたりですかね、

 キューッと空気が吸いにくくなる感じ。」


僕も自分の胸を

締めつける手振りで話します。

そしてさらに質問してみます。



「じゃあですね。

 また変なこと聞きますけど、

 もしそのキューってなってる胸のあたりに、

 人格と口があったなら、

 Tさんになんていってくると思いますか?


僕は胸を指さしながらいいました。


「えっ??はあ、はい…」



一瞬戸惑った様子、

でも、しっかりと何かを探るように、

Tさんはうつむいてます。


しばらく黙り込みます。

とても深いTさん一人の世界。

とてもゆっくりと時間が流れます。



そして一言一言、

丁寧に話し始めます。




「…うん、あの、

 …技術的なことも、人間関係も、

 いっぱい我慢したし、成長もした…。


 限界までがんばったのだから…、

 もうリラックスしたい。

 逃げ出したい。辞めたい。」



不思議と

子供のような顔になったTさん。


僕もできる限りあせらずゆっくりと、

自分の中から適切な言葉を探します。




「…うん、そうですよね。

 今まで本当に我慢して、成長もして、

 限界までがんばってきましたもんね。

 うん、…だから逃げたい、辞めたい…。

 うん……。うん…。


 じゃあですね…、

 そういってキューッとなって、

 息苦しくなってる胸のその子に、

 何か一言声をかけてあげてくれませんか?」




Tさんは涙目になりながら、

ぽつりぽつりと語りかけます。


「…今までいっぱい我慢して、…成長もして、

 限界までがんばったのだから…、

 今逃げたとしても…、今辞めたとしても…、

 誰もとがめたりしないよ。

 辞めたかったら辞めてもいいよ。」




そうです。


どれだけ我慢して努力してきたか、

今の状況を何とか良くしようと、

本を読んで勉強してきたこと。


1回目のカウンセリングで、

Tさんはたくさん訴えておられました。

もう十分に、我慢も成長もしてきたのです。



「うん…、そうです。…そうですよね。

 限界までがんばってきたのだから、

 今辞めても逃げても、誰もとがめない。

 
 今辞めても逃げても、

 少なくとも僕は絶対に、

 胸のその子をとがめません。


 むしろ、今までよくがんばってきたねと、

 褒めてあげたいくらいです。


 なんか胸のあたりを、

 なでてあげたいくらいですよね。


 …なんていえばいいんでしょうね。

 すごく、すごく深い

 大切な本音を聴いた気がします。」




これでこのカウンセリングは終了です。



このTさんの胸の子の言葉は、

おそらく、自分でも気づいてない、

本音の本音だったのでしょう。


この時点で会社を辞めるかどうか、

はっきりと結論を出したわけではありません。



でも、自分の本音の本音を知ってることは、

あらゆる意味で人の精神を強くするのです。



数日後にTさんからメールをいただきました。




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中越様

先日は誠にありがとうございました。
14日カウンセリングをしていただきましたTです。

3回の面談を終えて一番変わったのは、
毎日ほんのわずかでも自分の好きなこと、
興味のあるものに触れたり読んだりするようになったことです。

これからも続けていきたいと思います。
なんとなくですが、イメージの中で断片的だったものが
少しづつ繋がっていくんではないかと感じています。
また、具体的に仕事探しもはじめてみたいと思います。

相変わらずの会社での苦しい状況は、
やはりつらいですがカウンセリングの中で
自分の胸の中の「この子(?)」に対してかけた言葉、
あるいはかけていただいた言葉は本当のことなんでしょうね。


何か本当に開放してやりたいと思ってしまいました。
あまりにも苦しんでいる子をそのままにしておくことは
我慢という精神的な強さを意味しているのではなく、
むしろ無責任で残酷なことなのかもしれません。

今の会社に10年20年先もいることを想像できるかと言われた場合、
全くできないということはやはり
今は間違った選択をしているのだと思います。

やりたいことの断片がつながって仕事として成り立つように、
これからも自分の中で小さな変化を続けていきたいと思います。

会社を辞めることはやはり勇気のいることではありますが、
どこかで見極めたいと思います。


自分で申しましたように、
また、おっしゃっていただいたように何とかしたい、
しようという意志があれば人生絶対に何とかなると信じたいと思います。

自分のため、家族のため、世のため、
人のためになる仕事を絶対に見つけたいです。

きっとまたご相談させていただきたくなるときが来ると思います。

それが一カ月後か二カ月後かはわかりませんが、
そのときはまたよろしくお願いいたします。
燃え尽きてしまわぬように何とか自分を保ち続けてまいります。
その仕事が見つかる日までどうかお力添えいただけますと嬉しい限りです。


長々と書いてしまいましたが、取り急ぎ御礼申し上げます。
中越様もお体に気をつけてお仕事がんばってください。
また近いうちに(?)ご連絡させていただきます。




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そして半年ほどがたち、今回、

事例の紹介をお願いしたところ、

こんなメールをいただきました。


どうやら新しい道筋を、

自分で見つけられたようです。



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中越裕史様

ご無沙汰しております。
その節は大変お世話になり、ありがとうございました。
平日は中々メールが見られず、お返事が遅くなってしまい、申し訳ありません。
まさか先生からメールをいただけるとは思っておりませんでしたので、
大変驚いたのと同時に私のことを憶えていただけていて非常に嬉しく思います。

下記の件、私などで良ろしければ喜んで協力させていただきます。
間接的でも、誰かのお役に立てるのであればこれ以上うれしいことはありません。
本が出版されるのを楽しみに待っております。私も絶対に読ませていただきますね。

さて、私の近況を少しだけ話させていただきます。
カウンセリングを最後にしていただいてからしばらく経ちますが、
まだ当時の仕事は続けております。

ただ、カウンセリングでお話した内容は決して諦めているわけではなく、
実は大学院に行こうかという考えに至りました。

最近は社会人大学院生の募集も広く行われているようで、
海洋関係の技術の習得や研究ができる大学院を今探しております。

結構、間口が広くなっており、2次募集を受けて
来年4月入学というパターンも可能だということがわかりました。
合格できる保証はありませんが、勉強して技術を身につけて、
色々触れる機会を得ることで活躍できるフィールドが見つけられるのでは?
と考えています。

その間、今の仕事を続けるかどうかは
自分の心身やまわりの環境など含めて総合的に判断して決めるつもりです。

こうやって行動が起こせていることは
やはりあの時先生にカウンセリングをしていただいおかげだと
本当に感謝しております。


まだまだ途上で、この先何年かかるかもわからないので
やはり不安や怖さは依然ありますが、
少しづつでも着実に前に進んで行かれればいいなと思います。


あれからすっかりご無沙汰してしまい、全くご連絡もせず申し訳ありませんでした。
先生からメールをいただけただけで気持ちがまた明るくなるのを感じました。

近いうちにまたカウンセリングのお願いができますか?
距離が遠いのでいつでもというわけにはいかないのですが、
機会を見つけてまた予約を入れさせていただきたいです。



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もう、

僕が特に説明する必要も、

ないと思います。



一つだけ補足するとしたら、

このカウンセリングがうまくいったのは、

Tさんが自分の頭で考えて、

自分の体を動かして行動したから。



カウンセリングはそのきっかけ、

サポートをしたに過ぎません。


あくまでも、元からあった、

Tさんの力を引き出しただけに、

過ぎないのです。




Tさん、

事例の紹介に協力いただいて、

本当にありがとうございました。



また何かあれば、

ぜひ気軽に相談に来てくださいね。




【今回のポイント】

★行動してみないとわからない!!

★大切なのは本音の本音!!


≫ 事例8「魂のサクソフォン」

≪ 事例6「きっかけは退職届」

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