天職探しカウンセリング事例集
事例3 「木を植える男」
今回は好きという気持ちがわからない、
そんな悩みを持ってらっしゃるKさんの事例です。
Kさんの事例は長くなってしまうので、
読者の皆さんにわかりやすいよう、
多少省略しながら話させていただきます。
それではカウンセリング事例、
「木を植える男」です。
□好きなんて考えなくていい!
以前、引きこもりになった経験のある、
管理業務の仕事をしているKさん。
「好きという気持ちがわからない…」、
Kさんはそのことで3年近く悩み、
ほかのカウンセラーのところに通われてました。
僕はやりたいこと探し専門のカウンセラー。
好きという気持ちがわからないというのも、
僕の専門領域のひとつです。
そこでKさんは僕のところで、
カウンセリングをうけることになりました。
カウンセリングが始まってすぐ、
Kさんは質問されました。
「好きって気持ちがわからないんです。
好きっていうのはどういうことなんですか?」
何年もこの気持ちがわからず、
ずっと悩まれているそうです。
どうもお話を伺っていると、
自分が好きだと感じることに対して、
本当に好きかどうか考えれば考えるほど、
好きという気持ちがわからなくなるそうです。
僕は聞きました。
「Kさんは、
好きな食べ物や好きな芸能人はいますか?」
「はあ、伊藤美咲とか好きですけど…」
「伊藤美咲を好きって感じるときに、
本当に好きかどうかって考えないですよね。
好きってのは頭で考えるのではなく、
直感で感じるものではないでしょうか?」
本当に伊藤美咲を好きかどうか?
本人にあったこともないのに、
本当に好きといえるのだろうか?
伊藤美咲の顔が変わっても、
好きでいられるだろうか?
テレビの中と現実では、
伊藤美咲は別人かもしれない…?
そもそも自分は、
伊藤美咲の何を知っているのか?
そんなことを考え始めると、
好きかどうかわからなくなってしまう。
人間の脳の中で好きと感じる部分と、
いろんなことを考える部分は、
ぜんぜん違う場所にある。
だからこそ、考えれば考えるほど、
好きかどうかはわからなくなってしまう。
そんなことを説明させていただきました。
普段、カウンセリングの中で、
心の仕組みについて説明することは、
ほとんどといっていいくらいありません。
そういう説明をすることは、
せっかくの相談者自身が持つ解決力を、
封印してしまう可能性があるからです。
人間というのはたいていの場合、
人に決められた解決策よりも、
自分で決めた解決策のほうが、
実行に移してくれやすいのです。
だからカウンセラーというのは、
あまり心の仕組みについて説明しません。
でもこのときはなんとなく、
説明したほうが良い気がしました。
僕がKさんのことを、
知性が強いタイプと感じていた、
それが原因かもしれません。
「そうか~、なるほど~。
僕は好きがわからないんじゃないんですね。」
Kさんは僕の説明を聞いて、
とても納得された様子でした。
「僕はいろいろと考えすぎてしまう、
そんな癖があるんですよね~。」
考えすぎる癖がある。
Kさんは自分自身のことも、
よくわかってらっしゃるようです。
「う~ん、でも…。
それでも自分が何を好きなのか、
まだわからないんですよ…。」
「そうですよね。
説明を聞いただけでは、
なかなかわからないですよね。
Kさんがどんなことが好きなのか、
一緒に考えてみませんか?」
カウンセリングを進めます。
「頭では考えずに、
直感的にこれが好きだと思い浮かぶもの、
どんなことでもいいのでお話いただけますか?」
テレビ、ゲーム、マンガ、プロレス、歴史…。
Kさんは頭に思い浮かぶまま、
たくさん答えてくれました。
でも、何かしっくりきません。
なんとなくどれも深い感じがしないのです。
まるで昨日の晩ごはんを思い出してるような、
軽いトーンの口調で話されています。
心の深いところで感じながら話している、
そんな感じが伝わってこないのです。
Kさん自身も、
自分のあげた好きなものに対して、
まったくしっくりきている様子がありません。
これはどうしたものかと困ってしまい、
二人してしばらく沈黙していました。
でも、ずっと黙っていても仕方ありません。
僕自身がいま感じていることを、
素直に伝えてみようと思いました。
「好きなことを話していただいたんですけども、
僕はどうもしっくりくる感じがしないんです…。
なんというか、深い感じがないというか…。」
「ああ、そうですね。
そんな感じは僕もしています。
先生のおっしゃる『深い』というのは、
とても大切なポイントだと僕も思います。
ああ、そうか~。
『深い』感じがしないですよね~。
でも、『深い』って何なんでしょうか…?」
自分自身が深いところで話していない。
それは自分でも良くわかるそうです。
でも、『深い』とは何かを考え込んでしまう。
それでは『好き』がわからないのと同じです。
考えたってわかるはずがありません。
ご自身でおっしゃっておられたように、
「考えすぎてしまう癖」があるようです。
このままはなしを続けていても、
きっと「考えすぎてしまう癖」で、
堂々めぐりになってしまう。
そんな感じがすごくしたので、
やり方を変えることにしました。
「Kさんはいままで、
3年以上好きって何か考えたけれど、
うまくいかなかったんですよね。
3年やってうまくいかなかった方法を、
これからも続けてうまくいくでしょうか?」
「ああ!そうですね!
うまくいくとは思えないです!」
これにはすごく納得された様子です。
「では、考えることをやめてみませんか?」
「はい!考えるのをやめて見ます!
では、考えるのをやめて、
どうしたらいいでしょうか?」
Kさんはとても素直なタイプで、
言われたとおりやってみよう、
そういう気持ちがとても強いです。
「何か思いつきでも何でもいいので、
ほんの少しでも興味があることを、
何か実際にやってみて欲しいんです。」
「なんでもいいから興味があることを、
実際にやってみるですか…。」
「ええ、本当に何でもいいんです。
どんな小さなことだってかまいません。
いつもと違うことをやってみませんか?」
解決思考ブリーフセラピーに、
『うまくいっていないのであれば、
何でもいいから違うことをせよ。』
という考え方があります。
とはいえいま思うと、
ちょっと強引な進め方だなと思います。
ところがこれがきっかけで、
やりたいことへの取っ掛かりを、
見つけることになりました。
またしばらく沈黙があったあと、
Kさんは話し始めます。
「…実は役所で募集のあった、
『ショクジュ』のボランティアに、
今週の土曜に行こうかと思うんです…。」
「『ショクジュ』?
え~と、『ショクジュ』って何でしょうか?」
「お城の公園に、
木を植えるボランティアなんですよ。」
「ああ、なるほど、植樹ですか。
へ~、そんなボランティアがあるんですね。
でもなんかいい感じがしますね!
今までとちょっと違う、
なんとなく深い感じがありますよね。」
「そうでしょうか。
深い感じがするでしょうか?
僕は植樹のボランティアに、
行ったほうがいいでしょうか?」
「どうでしょうね?
それを決めるのは僕ではなくKさんです。
でも、植樹のボランティアに興味があったから、
いまお話いただいたのではないですか?」
「…はい、そうですね。はい!
いつもは役所の案内なんて気にしないんです。
でもこの植樹のボランティアだけは、
なんか気になったんですよね。」
「Kさん自身が、
行ってみたほうがいいと思うのなら、
行ったほうがいいでしょうね。」
「そうですね…。はい!
とりあえず行ってみます!」
自分が何に興味を感じているのか?
自分が何をやりたいと感じているのか?
その答えを自分で出さず、
誰かに答えを出してほしくなる。
人生で行き詰ってしまったとき、
誰でもそんな風になると思います。
自分で選んだ選択が間違ってると、
言い訳することすらできませんから。
でも、自分で選んだ選択でなければ、
結局、何の意味もありません。
失敗してもいいし間違えてもいいから、
自分の人生を自分で考えて自分で決める。
まずはそれを覚えることが大切です。
不安であっても、
自分で選んで決めたという事実が、
やりがいや生きがいになるのです。
数週間がたち、
Kさんから予約が入りました。
植樹について訊くと、
Kさんはいいました。
「すごく楽しかったです!
いや、なんというか・・・、
人生で初めて充実してるってことを、
実感した体験でしたね。」
「人生で始めて充実を感じた…!
それはすごいことですね。」
「自分が植えた木が育っていくのを考えると、
なんていえばいいんでしょうね…、
なんかこうすごくいい感じがするんですよ…。」
植樹の体験について話すときは、
前回とはうって変わって、
とても心の深いところで話しているのが、
こちらまで良く伝わってきました。
Kさんの場合、
自然についてはもともと、
興味があったのかもしれません。
『うまくいっていないのであれば、
何でもいいから違うことをせよ。』
これがとてもうまくいったケースです。
考えてばかりで堂々巡りだったのが、
ちょっとした行動を起こすことで、
堂々巡りを断ち切ることができた。
結局のところ、
「好き」という感情を知るには、
実際に体験してみるしかないのです。
Kさんはこの後もしばらく、
植樹がいかに充実していたのかを、
たくさん語ってくれました。
ここまで来た時点で、
自然に関する仕事に就きたいのかなと、
僕はすっかり思い込んでいました。
そこで僕は訊いてみました。
「自然に関することが好きなんですかね?」
すると意外にも違うようです。
「う~ん、なんというか…。
自然は確かに好きだと思うんですよ。
でも、どんな仕事があるんですかね?
それに自分にとって大切なのは、
『場所』なんですよ。
何をしているかと同じくらい、
どんな場所にいるかっていうことが、
自分にとってすごく大切なことなんです。」
「う~ん、『場所』、ですか。
どんな場所にいるかが大切なんですね。」
植樹がすごく充実した体験だったのに、
植樹に関する仕事はしっくりこなさそうです。
代わりに「場所」というキーワードが出てきました。
さて、いったいここから、
どうカウンセリングを進めるべきか?
そんなことを考えていると、
Kさんが話し始めました。
「ちょっと話は変わるんですが、
今の仕事をいつか辞めたいと思ってまして、
知り合いが働いているゴルフ場で、
土日だけバイトしようかと思うんです。
でも本当にそれでいいのかどうか、
自分でも自信がなくって…。
僕はバイトしたほうがいいですかね?」
本当に急に話が変わりました。
こんなときカウンセラーは、
あわてずにその話についていきます。
急に話が変わったとしても、
その話に何か意味が、
あるのかもしれないからです。
急に話は変わったものの、
問題になってるのは前回と一緒です。
考えすぎてしまうことと、
自分で答えを出さないこと。
『自分はバイトをするべきかどうか?』
考え込んでも答えが出るものではなく、
とりあえずやってみないとわかりません。
一番問題なのは、
「部屋の中で一人、じっと考え込むこと」、
これでは何も進展しません。
まずはそこから、
行動を変えていくことにします。
「知り合いが働いているのであれば、
まずはどんな仕事なのか、
次、僕のところににこられるまでに、
一度、見に行ってみてはいかがでしょうか?」
ここでも考えるのではなく、
行動に移す課題を出しました。
この回のカウンセリングは、
ここで終わりです。
さて、カウンセリングが終わった後、
僕は気になっていたことがありました。
植樹や自然に関する仕事に、
どんなものがあるのか?
Kさんも僕も、
いまいち情報が足りてません。
もう少し知識があるなら、
何かしっくり来るものが、
思い浮かぶかもしれません。
そこでちょっと、
植樹や自然に関する仕事を、
簡単に調べてみました。
「グリーンコーディネーター」
「植木職人」
「庭園設計士」」
「盆栽職人」
「フラワーアレンジメント」などなど…
思っているより、
たくさんの職業があります。
こんなにたくさんあるのなら、
Kさんにも何かしっくりくる職業が、
あるかもしれないなと思いました。
するとある職業に、
目がとまりました。
その職業の名前は、
「グリーンキーパー」。
別名、「芝生のスペシャリスト」、
といわれているそうです。
ゴルフ場やサッカー場などの、
天然芝のメンテナンスを、
手がけている仕事だそうです。
この職業を見つけたとき、
「ああ~、なるほどな~。」、
と思いました。
Kさんがゴルフ場でバイトしたい理由が、
とてもよくわかったからです。
ゴルフ場で仕事がしたかったのは、
グリーンキーパーの仕事ができるからだと、
すぐにわかりました。
次のカウンセリングで、
僕はKさんにいいました。
「Kさん、
あれから僕もちょっと調べたのですが、
『グリーンキーパー』って仕事が、
あるそうですね。」
「ああ、グリーンキーパーには、
すごく憧れますね!」
「おお、憧れてるんですね。」
あんなに好きって気持ちが、
わからないっていってたのに、
憧れていると口にしています。
「先生、
私は好きがわからないんじゃ、
ないんですね。」
「憧れてるって、
いっちゃいましたからね。」
「ははははっ、そうですね~。」
ここまでの時点で、
きっちりとやりたいことは、
見つけることができました。
後は一歩踏み出せるかどうか。
たいていの相談者の場合、
こっちのほうが難しいです。
「先生、
僕は本当にゴルフ場の仕事に、
就けばいいんでしょうか?」
「Kさん自身はどう思いますか?」
「それがわからないから教えてほしいんです。」
「Kさん、もし僕がそれに答えたら、
Kさんはこれからも何かあるたびにずっと、
僕のところにこないといけなくなる。
それでいいんですかね?」
「…確かに、それはそうですね。
それでは困ると思います。
自分で決めなきゃいけないということも、
ここ数年、ずっと考えていたことなんです…。」
Kさんは初回からこんなふうに、
自分の問題点もよくわかっているタイプです。
だからこそ僕はいいます。
「どんな小さなことからでもいいんです。
失敗してもいいから、
Kさん自身がやりたいと思っているように、
思い切ってやってみてはどうでしょう。」
「そうですよね…。
思い切ってやるしかないですよね。」
それから数ヶ月後、一度だけ、
メールでのやりとりはあったものの、
しばらく連絡のなかったKさんから、
メールをいただきました。
==============================
「なかなか前に進まず、
一度先生にメールしましたが、
とにかく行動だという事で、
ゴルフ場の土日のバイトから直接電話して探していたところ、
募集しようとしていたところと偶然出会い、
面接をしてもらい昨日正式に決まりました。
(経緯を書くともっと長いのですが)
自分の場合特にこの一年半、
いろんな先生にお世話になり、
中越先生のプログラムとカウンセリングも
非常にお世話になりました。
ありがとうございました。」
□カウンセラー中越のコメント
この事例紹介では、
3、4回のカウンセリングに見えますが、
実際にはもっと回数を重ねています。
3年近く、
好きという気持ちがわからなくて、
悩んでおられたKさん。
最初に僕のところにこられてから、
たった4ヶ月でやりたいことへの一歩を、
踏み出すことができました。
もちろん、僕のところへ来る前に、
3年ほど通われていたカウンセラーの方々の力も、
とても大きかったのだと思います。
僕のところにきて急に話が展開したのは、
僕の能力が特別高いというよりも、
タイミングが良かったのだと思います。
ですが、どちらにせよこれは、
僕たちカウンセラーの能力というより、
Kさんに問題解決能力が十分に眠っていた、
そう考えたほうが自然だと思います。
今改めてこのカウンセリングを振り返ると、
自分で決めて行動するということを、
僕は促していたに過ぎません。
何らかの事情でいままでの人生で、
その問題解決能力が眠っていた。
カウンセリングによって、
眠っていた解決能力が目覚めた。
そう考えるのが一番自然です。
なんせそれらを実際に行動したのは、
すべてKさん本人なのですから。
それにこれはただの僕の推測ですが、
Kさんは僕のところへくる前から、
グリーンキーパには憧れていたと思います。
やりたいことに挑戦する不安から、
その憧れを封印していたのかもしれません。
人生の中で何か行き詰まってしまう。
そんなことは誰にでも必ずあることです。
そんなときほんの少し促すことで、
本来の力を取り戻してもらうことが、
僕たちの仕事だと思います。
Kさん、ご協力ありがとうございました。
これからも芝生を守り続けてくださいね。
応援しています。
【今回のポイント】
★憧れてるっていっちゃいましたから。
★問題解決能力は眠っている!
≫ 事例4「電気屋さんのピアノ」
≪ 事例2「やりたいけど不安です…」
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