カウンセリングで、最初に雑談する理由

カウンセリングで、最初に雑談する理由

こんにちは。

カウンセラーの中越です。


今回は、僕がカウンセリングのときに、なぜ最初にちょっとだけ雑談をするかを、お話ししたいと思います。


まず、相談者さんが来られるのを、そわそわして待ちます。

そして、ピンポーンと鳴ると、大きく深呼吸を2回ほどします。


ドアを開けて、「こんにちは~」と笑顔で迎えます。


このときの笑顔、表情、声色で、初回カウンセリングの7割は決まる気がします。


なにしろ相談者さんは、相当に緊張してこられます。

初めて会う人に、人生の深い悩みを話すわけです。


カウンセリングに来る前に、


「こんなこと話していいのかな…」、

「こんな話して変に思われないかな…」


そういう不安が、頭の中を駆け巡っています。


ピンポンを押したときの相談者さんは、その緊張が一番高まっている瞬間です。


だから、ドアを開けたときの第一印象は、ものすごく重要なのです。

このときに、カウンセラーの表情が固かったり、暗かったりすると、相談者さんはもっと緊張してしまいます。

なので、なるべくリラックスした表情で、相談者さんを迎えてあげたいです。


とはいえ、表情だけ取り繕っても、不自然に固い笑顔になるだけです。

なので、大きく深呼吸を2回ほどして、ドアを開けるほんの数秒だけでもいいので、なるべく本当にリラックスした気持ちを作ります。


もちろん、カウンセラーだって人間です。

慣れないうち、特に初回の相談者さんが来られるときは、緊張して当然です。僕自身、いまだに緊張することがあります。

なので、これも努力目標でいいと思います。


それでも、「ピンポンがなったら、まずは大きく2回ほど深呼吸をする」。

それだけでも大きく違うと思います。


ドアを開けて、「どうぞ~」と相談者さんを出迎えたら、「こちら側のソファーへどうぞ」と案内します。

もちろんイスでも十分です。


「自分がどこに座るのか、相談者さんに決めてもらう」。

そういう方法もカウンセリングの一つなのですが、大抵の相談者さんはドギマギしてしまって逆効果なので、そこはもうこちらで決めてしまってもいいと思います。

(これは、どこに座ってもいいという自由があることを相談者さんに示したり、どこあたりに座るのかということも一つの見立てになるからだと思います。「見立て」とは何かはまた別の機会に説明します)


僕自身は、ただでさえ緊張しているのに、よけい緊張させる必要はないかなと考えています。

それにそもそも、うちのカウンセリングルームには、選べるほどイスがありません。

大きなソファーと小さなソファーの2つしかありません。せっかくなので、大きなソファーに座ってもらってます。

でも、別にパイプイスが2つあれば、カウンセリングは十分にできます。

ただ、カウンセラーは座り仕事で、長時間座っていると腰がやられます。

なのでやっぱり、ソファーがあった方がいいなと思い、僕はソファーを買いました。

それでも腰痛にはなるので、ストレッチや体幹トレーニングなども、もはやカウンセラーの仕事の一部なのではと感じることがあります。


で、ソファーに案内したら、ペットボトルのお茶をコップに入れながら、「急に寒くなってきましたね~」とか、「本当に暑くてたまりませんね~」など、ちょっとした雑談をします。

「こういう季節って、なにを来たらいいのか迷いますよね」とかもよく言います。


子供のころは、

「なんで大人は天気の話ばかりするんだろう?そんなのわかりきったことなのに」

と思っていました。


でも、あれは今になって思うと、


「自分はあなたに敵意がないですよ。むしろ、仲良くしたいんです。

そしてこれからも、親しい関係を維持したいと思っています」


というメッセージのやりとりなのだと、よくわかりました。


同じ天気の話をしても、「今日は機嫌が悪そうだな~」とか、「どうもイライラしてるみたい」というのは、十分に伝わります。

そうしたら必要もないのに、「僕、なにか失礼なことしたっけ?」と考えてしまったりします。

そこから人間関係がすれ違い、ケンカやトラブルになってしまうこと。夫婦や職場ではしょっちゅうあることです。


人間にとって、挨拶、そして雑談というのは、思っている以上に大切なことなんです。

幼稚園、小学校と、「ちゃんと挨拶をしなさい」と嫌になるくらいいわれたのには、ちゃんと意味があったんですね。



なので、カウンセリングで最初に数十秒から数分程度、雑談をするのは、思っている以上に意味があります。

そういうちょっとしたやりとりが、相談者さんの緊張をほぐし、「このカウンセラーさん、話しやすそうだな~」と、そういう雰囲気作りになっていきます。


それから春には、

「え~と。ちょっと花粉症がひどくてですね。

途中で鼻をかむかもしれませんが、ごめんなさいね」

と一言、断りを入れます。


これを初めて言った日、本当に花粉症がひどくてひどくて、

「今日のカウンセリングどうしよう。大丈夫かな…」

と不安になっていました。


カウンセリング中にあまりにもずるずる鼻をすするのも、なんだか集中力に欠けるというか、話の腰を折ってしまうことがあります。いや、実際に話の腰を折ってしまいます。

かといって、鼻水を止める薬は眠くなってしまうので、どうしたものかと悩んでいました。


その結果、ちょっと恥ずかしいけれども思い切って、

「途中で鼻をかんだら、ごめんなさいね」

といってみたのです。


そしたら、

「ああ、私も花粉症なんで、全然大丈夫ですよ!私も鼻をかむかもしれません」

といってくださり、なんだかすこし人間関係が近づいた感じがしました。

こういうのは思い切って、本当のことを言ってしまった方が、場が和むのだなと気づかされました。

日本人は花粉症の人が多いので、案外、あいさつ代わりになるのかもしれません。



相談者さんがいきなり話し始めた場合



さて、めずらしいケースとして、こういう雑談をするまもなく、イスに座った瞬間に話し始める相談者さんもおられます。


そういうときは無理に雑談などする必要はなく、そのままカウンセリングをはじめてしまっていいと思います。

すべては相談者さん中心で、その人が話しやすいペースで進めていくのが大事です。


なかには椅子に座った瞬間に、ポロポロと泣き出す方もおられます。

それは強い悩みを抱えていた苦痛と、こんなことをどう話したらいいのかという不安と緊張が、イスに座った瞬間に一気にほどけ、感情があふれ出てきたのでしょう。

そういうときは、ぜひその相談者さんに寄り添って、そのままゆっくりじっくりとお話を聴いていきましょう。



オンラインのときはどうするか



さて、コロナ以降の今は、圧倒的にオンラインカウンセリングが増えています。


もはや、大手カウンセリング団体もオンライン。ロープレだってオンラインの時代です。

うちもオンラインカウンセリングが増えています。

おそらくこれは、コロナが収束しても以前に戻ることはないでしょう。


で、オンラインカウンセリングの場合、雑談ってどうすればいいのでしょう?

この辺、本当に悩ましいところなのですが、

「聞こえていますか~?」

「映像は映ってますかね?」

とかの確認が、ちょっとした挨拶になっているようです。


このときの笑顔や口調に気をつけていれば、それほど問題ないと思います。


もちろん、ちょっとした雑談ができれば、それに越したことはありません。


ただ、僕の感覚だと、どうもリアル面談よりも、オンラインの方が緊張が少ないように感じています。


ZOOMの起動に精一杯で緊張するヒマがないままはじまってしまうのか?

それとも、実際に建物まで足を運んでピンポンを押す方が緊張するのか?


う~ん、後者の方が影響が強い気がします。


知らないマンションに行って、ピンポンを押すのって、なんだか緊張しますもんね。


その辺の緊張をどうほぐすかも、カウンセラーの考えるべき仕事なのだと思います。


(ちなみにカウンセラー側は、スマホやノートパソコンについているカメラではなく、1万円以内のものでいいので、webカメラを買った方がいいです。

そして、自分の正面かすこし上に設置した方がいいでしょう。カメラ位置が下だと、必要以上に怖い表情に見えるんですよね)