□カウンセリング事例1
今週から、カウンセリングの事例を、
連載にて紹介しようと思います。
カウンセリング過程を見てもらうことは、
みなさんにも、きっと役に立つと思います。
今回は、Sさんという男性の事例です。
※掲載については、ご本人の了解をいただいております。
個人情報保護のため、ご本人が特定できないよう、修正をさせていただいております。
□カウンセリング事例1「毎週、競馬場に行く男」
堅い会社に勤務する、Sさんは最初にいいました。
「就職するとき、特にやりたかった仕事ではありませんでした。
でも、働きながらやりがいが見つかるかもしれないし、
自分に合わかったら転職すればいい、と思ってました。
いま思えば、安易に就職を決めてしまったと思います…。」
会社を辞めたい理由としては、
「この会社にいても、将来が明るいとは思えない。」
ということでした。
Sさんの話を聞いていると、
「お金を数えたり計算したりするのを、
自分は好きとは思えません。
今の会社はキッチリと規則どおりというか、
堅すぎて仕事が面白くありません。
先輩にも、こんな会社にずっといたらダメになる。
何かやりたいことや、他の仕事を見つけたほうがいい、
と言われました。」
カウンセリングでは、
本当にやりたいことを見つけたいのか、
それとも、今の会社が嫌なだけなのか、
それを最初にしっかりと見きわめます。
これについては、ほとんどの相談者の方が、
自分でもよくわかっていません。
相談者自身が話しながら、
それをしっかりと見きわめていきます。
Sさんの場合は、
今の仕事が面白くないということや、
先輩にいわれた言葉が気になって、
会社を辞めたくなった様子もありました。
ただ、最初から一貫して、
「この会社にいても、将来が明るいとは思えない。」
ともおっしゃっています。
何度かこの言葉をいわれたので、
ここをもう少し詳しく話してもらいました。
Sさんは、
「今の会社にずっといても、
無駄に人生を過ごしている気がするんです。
正直、土日の休みのために働いているだけ…。
もっと充実した時間をすごしたいんです。
そのためにやりたいことを見つけたいと思うんです。
でも、やりたいことや、興味のあることがわからなくて…。
どうやったらやりたいことって見つかるんですか?」
会社が嫌なだけであれば、
大抵の場合、ここでも会社への不満を言います。
Sさんのこの返答は、やりたいことを見つけたいという、
自己実現の欲求だと、僕は思いました。
そこで実際に、
やりたいこと探しに入ります。
「では、興味のあることや好きなこと。
どんなことでもいいので、
一緒に書き出してみましょうか?」
人と接すること、企画をすること、人事に関すること…。
※実際の内容とは少し変えてあります。
なるべくたくさんのことを思い出して、
一緒にたくさんのことを書き出しました。
でも、どうしても興味のあることが見つかりません。
どれも好きなことには違いないけども、
どうしても核心に迫っていない感じがするのです。
なんとなく好きという気持ちが伝わってきません。
さらにSさんは言います。
「どうしても何をやりたいのか、
自分でも何に興味があるのかわからないんですよ…。」
この時点で、開始から35分経過…。
カウンセリング残り時間は、あと15分しかありません…。
このままでは、特に何もわからず、
カウンセリングが終了してしまいます。
もちろん、一回目のカウンセリングなので、
単に会社が嫌なのではなく、
やりたいことを見つけたいとわかっただけでも、
十分ともいえます。
ペースが速すぎるカウンセリングは、
ときに、逆効果のこともあるからです。
でも僕は、出来れば一回目で、
ある程度の方向性を見つけるようにしています。
そのほうが相談者が、
継続してカウンセリングをう受けてくれるからです。
継続しなければ、カウンセリングは効果がでません。
そこで、思い切って正直に話しました。
「ここまで35分ほどお話をうかがったのですが、
正直、どうカウンセリングを進めるか、迷ってます。
好きなこと、興味のあることがないのはわかりました。
ただ、なんとなく心の深いところで、
お話をしていただいている感じがしないんです。
もしSさんの中で、
まだお話していないことがあれば、
僕は絶対にどんなことを話していただいても、
批判したりバカにしたりすることはありません。
どんなことでもかまわないので、
まだ何か心の中に思うことがあれば、
お話していただけますでしょうか?」
これはその時の僕の、本当に正直な気持ちです。
なんとなく、心の深いところで話していただいていない、
腹の底、本音で話していただいていない感じがありました。
するとSさんは、話し始めました。
「………仕事と関係ないことでもいいんですか?」
「もちろん!どんなことでもいいですよ。」
「ぜんぜん仕事には関係ないと思うんですが…。」
「ええ、関係なくていいですよ!」
なんとなく、光が見えてきた感じがします。
「実は…、競馬が好きなんです。」
「競馬!?競馬ってあのギャンブルの?」
「ええ、その競馬です。
昔から競馬はすごく好きで、
学生のときは、毎週、競馬場までいってました。」
ここで、「競馬なんてしょせんは賭け事だろ?」と、
偏見を持って聴くと、失敗に終わります。
「実は僕、競馬に行ったことがないんですよ。
教えて欲しいんだけど、競馬のどこが面白いの?
やっぱり、儲かったときが楽しいの?」
Sさんは言います。
「そりゃまあ、儲かれば嬉しいですけど、
馬を見ているだけで面白いんですよ。
あの馬の血統とか、他の馬との因縁とか、
そういうドラマがめっちゃ面白いんです!
学生の頃は、競馬関係の仕事に就けたらなー、
なんて思ったこともあるんですよ。
土日の休みのために働いていると言ったのも、
競馬のために働いているという意味なんですよ。」
そこから約10分ほど、競馬について熱く語ってくれました。
その様子はそれまでとはうって変わって、
まさに本音で、腹の底の感情で話してくれている。
それがこちらまでよく伝わってきました。
そこで何か行動を起こすため、宿題を出しました。
「Sさん、今日から1ヶ月間。
毎週土日に競馬場へ行って欲しいんです。
出来そうですか?」
Sさんは東京のはずれに住んでいて、
競馬場までは少し時間がかかります。
それでもSさんは、
「それなら大丈夫です。出来ると思います。
いや~、むしろ嬉しいくらいです。」
「それでは、一ヶ月経ったら、
宿題の報告をしてくださいね。」
学生のときは、競馬場までいってたけど、
社会人になってからは、多忙ということもあり、
競馬場までは行ってなかったとのこと。
この宿題をきっかけに、競馬への情熱を、
取り戻してくれるかな、と思っていました。
ところが、一ヶ月、二ヶ月たっても、
Sさんから連絡がありません…。
一回目で競馬まで持っていったのが早すぎたかな?
と思っていました。
ところが4ヶ月ほどして、Sさんから予約が入りました。
カウンセリングが始まっても、Sさんはなかなか話し始めません。
やっぱりうまくいかなかったのかな、
と思っているとSさんが話し始めました。
「実は……、競馬関係の新聞社に、
ダメもとで履歴書を送ってみたら、
書類選考に通ったんですよ!!
面接は落ちたけど、書類選考に通るとは…!」
Sさんはとても嬉しそうに話しました。
「書類選考に通ったとわかったとき、
どんな感じがしましたか?」
と、僕が訊くと、
「ウソみたいです!信じられなかったです!」
と何度もおっしゃいました。
これがきっかけで、競馬関係の仕事に就くことが、
Sさんの中で、現実味のあるものになりました。
「競馬関係の仕事に就くなんて、どうせ無理…。」
という固定観念が外れたのです。
2回目のカウンセリングが終わり、
一ヶ月ほどたって、Sさんからメールがありました。
Sさんは、以前受けた競馬関係の新聞社で、
アルバイトとして働くことになったそうです。
Sさんが、友人にそのことを話すと、
「学生の時に、将来スポーツ新聞社で働いて、
好きな競馬の取材とかできたらいいなって言ってたもんな、
良かったな」、と言われたそうです。
Sさんは言います。
「結局は、その時話した夢を忘れてたというか、
いつからか自分には無理なんだという思いが生まれて、
話した事実さえも考えないようにしてたんですかね。
なんか不思議な感じがしましたし、
我ながら遠回りしたなぁ‥と思いました(^^;)」
~~カウンセラーなかごしのコメント~~
このカウンセリングで僕がしたことは、
途中、かんたんな宿題は出したものの、
基本的にはSさんの話を聴いただけです。
実際に応募したことに関しても、
Sさんの中に眠っていた力を引き出しただけです。
力を引き出すきっかけになったのは、
Sさんが腹の底から、本音で、僕と話をしたからです。
Sさんを変えたのは、Sさん自身です。
僕は、ほぼすべての人が、自分の力を引き出すだけで、
やりたいことを見つけられると思います。
Sさん、ご協力、ありがとうございましたm(_ _)m
今回のポイント
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