こんにちは。
カウンセラーの中越です(^_^)
今回は前回の記事の続きです。
好きという気持ちがわからないKさん。
考えすぎる癖があって、
考えれば考えるほど堂々巡りになって、
好きという気持ちがわからない…。
そこで、少しやり方を変えることに。
『うまくいっていないのであれば、
何でもいいから違うことをせよ。』
どんな思いつきでもいいから、
何か違うことをやってもらうことに。
それがきっかけで、
大きな取っ掛かりをつかまえます。
さて、Kさんがやってくれたこととは?
□憧れてるっていっちゃいましたからね~。
「ええ、本当に何でもいいんです。
どんな小さなことだってかまいません。
いつもと違うことをやってみませんか?」
解決思考ブリーフセラピーに、
『うまくいっていないのであれば、
何でもいいから違うことをせよ。』
という考え方があります。
とはいえいま思うと、
ちょっと強引な進め方だなと思います。
ところがこれがきっかけで、
やりたいことへの取っ掛かりを、
見つけることになりました。
またしばらく沈黙があったあと、
Kさんは話し始めます。
「…実は役所で募集のあった、
『ショクジュ』のボランティアに、
今週の土曜に行こうかと思うんです…。」
「『ショクジュ』?
え~と、『ショクジュ』って何でしょうか?」
「お城の公園に、
木を植えるボランティアなんですよ。」
「ああ、なるほど、植樹ですか。
へ~、そんなボランティアがあるんですね。
でもなんかいい感じがしますね!
今までとちょっと違う、
なんとなく深い感じがありますよね。」
「そうでしょうか。
深い感じがするでしょうか?
僕は植樹のボランティアに、
行ったほうがいいでしょうか?」
「どうでしょうね?
それを決めるのは僕ではなくKさんです。
でも、植樹のボランティアに興味があったから、
いまお話いただいたのではないですか?」
「…はい、そうですね。はい!
いつもは役所の案内なんて気にしないんです。
でもこの植樹のボランティアだけは、
なんか気になったんですよね。」
「Kさん自身が、
行ってみたほうがいいと思うのなら、
行ったほうがいいでしょうね。」
「そうですね…。はい!
とりあえず行ってみます!」
自分が何に興味を感じているのか?
自分が何をやりたいと感じているのか?
その答えを自分で出さず、
誰かに答えを出してほしくなる。
人生で行き詰ってしまったとき、
誰でもそんな風になると思います。
自分で選んだ選択が間違ってると、
言い訳することすらできませんから。
でも、自分で選んだ選択でなければ、
結局、何の意味もありません。
失敗してもいいし間違えてもいいから、
自分の人生を自分で考えて自分で決める。
まずはそれを覚えることが大切です。
不安であっても、
自分で選んで決めたという事実が、
やりがいや生きがいになるのです。
数週間がたち、
Kさんから予約が入りました。
植樹について訊くと、
Kさんはいいました。
「すごく楽しかったです!
いや、なんというか・・・、
人生で初めて充実してるってことを、
実感した体験でしたね。」
「人生で始めて充実を感じた…!
それはすごいことですね。」
「自分が植えた木が育っていくのを考えると、
なんていえばいいんでしょうね…、
なんかこうすごくいい感じがするんですよ…。」
植樹の体験について話すときは、
前回とはうって変わって、
とても心の深いところで話しているのが、
こちらまで良く伝わってきました。
Kさんの場合、
自然についてはもともと、
興味があったのかもしれません。
『うまくいっていないのであれば、
何でもいいから違うことをせよ。』
これがとてもうまくいったケースです。
考えてばかりで堂々巡りだったのが、
ちょっとした行動を起こすことで、
堂々巡りを断ち切ることができた。
結局のところ、
「好き」という感情を知るには、
実際に体験してみるしかないのです。
Kさんはこの後もしばらく、
植樹がいかに充実していたのかを、
たくさん語ってくれました。
ここまで来た時点で、
自然に関する仕事に就きたいのかなと、
僕はすっかり思い込んでいました。
そこで僕は訊いてみました。
「自然に関することが好きなんですかね?」
すると意外にも違うようです。
「う~ん、なんというか…。
自然は確かに好きだと思うんですよ。
でも、どんな仕事があるんですかね?
それに自分にとって大切なのは、
『場所』なんですよ。
何をしているかと同じくらい、
どんな場所にいるかっていうことが、
自分にとってすごく大切なことなんです。」
「う~ん、『場所』、ですか。
どんな場所にいるかが大切なんですね。」
植樹がすごく充実した体験だったのに、
植樹に関する仕事はしっくりこなさそうです。
代わりに「場所」というキーワードが出てきました。
さて、いったいここから、
どうカウンセリングを進めるべきか?
そんなことを考えていると、
Kさんが話し始めました。
「ちょっと話は変わるんですが、
今の仕事をいつか辞めたいと思ってまして、
知り合いが働いているゴルフ場で、
土日だけバイトしようかと思うんです。
でも本当にそれでいいのかどうか、
自分でも自信がなくって…。
僕はバイトしたほうがいいですかね?」
本当に急に話が変わりました。
こんなときカウンセラーは、
あわてずにその話についていきます。
急に話が変わったとしても、
その話に何か意味が、
あるのかもしれないからです。
急に話は変わったものの、
問題になってるのは前回と一緒です。
考えすぎてしまうことと、
自分で答えを出さないこと。
『自分はバイトをするべきかどうか?』
考え込んでも答えが出るものではなく、
とりあえずやってみないとわかりません。
一番問題なのは、
「部屋の中で一人、じっと考え込むこと」です。
まずはそこから、
行動を変えていくことにします。
「知り合いが働いているのであれば、
まずはどんな仕事なのか、
次、僕のところににこられるまでに、
一度、見に行ってみてはいかがでしょうか?」
ここでも考えるのではなく、
行動に移す課題を出しました。
この回のカウンセリングは、
ここで終わりです。
さて、カウンセリングが終わった後、
僕は気になっていたことがありました。
植樹や自然に関する仕事に、
どんなものがあるのか?
Kさんも僕も、
いまいち情報が足りてません。
もう少し知識があるなら、
何かしっくり来るものが、
思い浮かぶかもしれません。
そこでちょっと、
植樹や自然に関する仕事を、
簡単に調べてみました。
「グリーンコーディネーター」
「植木職人」
「庭園設計士」」
「盆栽職人」
「フラワーアレンジメント」などなど…
思っているより、
たくさんの職業があります。
こんなにたくさんあるのなら、
Kさんにも何かしっくりくる職業が、
あるかもしれないなと思いました。
するとある職業に、
目がとまりました。
その職業の名前は、
「グリーンキーパー」。
別名、「芝生のスペシャリスト」、
といわれているそうです。
ゴルフ場やサッカー場などの、
天然芝のメンテナンスを、
手がけている仕事だそうです。
この職業を見つけたとき、
「ああ~、なるほどな~。」、
と思いました。
Kさんがゴルフ場でバイトしたい理由が、
とてもよくわかったからです。
ゴルフ場で仕事がしたかったのは、
グリーンキーパーの仕事ができるからだと、
すぐにわかりました。
次のカウンセリングで、
僕はKさんにいいました。
「Kさん、
あれから僕もちょっと調べたのですが、
『グリーンキーパー』って仕事が、
あるそうですね。」
「ああ、グリーンキーパーには、
すごく憧れますね!」
「おお、憧れてるんですね。」
「先生、
私は好きがわからないんじゃ、
ないんですね。」
「憧れてるって、
いっちゃいましたからね。」
「ははははっ、そうですね~。」
ここまでの時点で、
きっちりとやりたいことは、
見つけることができました。
後は一歩踏み出せるかどうか。
たいていの相談者の場合、
こっちのほうが難しいです。
「先生、
僕は本当にゴルフ場の仕事に、
就けばいいんでしょうか?」
「Kさん自身はどう思いますか?」
「それがわからないから教えてほしいんです。」
「Kさん、もし僕がそれに答えたら、
Kさんはこれからも何かあるたびにずっと、
僕のところにこないといけなくなる。
それでいいんですかね?」
「…確かに、それはそうですね。
それでは困ると思います。
自分で決めなきゃいけないということも、
ここ数年、ずっと考えていたことなんです…。」
Kさんは初回からこんなふうに、
自分の問題点もよくわかっているタイプです。
だからこそ僕はいいます。
「どんな小さなことからでもいいんです。
失敗してもいいから、
Kさん自身がやりたいと思っているように、
思い切ってやってみてはどうでしょう。」
「そうですよね…。
思い切ってやるしかないですよね。」
それから数ヶ月後、一度だけ、
メールでのやりとりはあったものの、
しばらく連絡のなかったKさんから、
メールをいただきました。
「なかなか前に進まず、
一度先生にメールしましたが、
とにかく行動だという事で、
ゴルフ場の土日のバイトから直接電話して探していたところ、
募集しようとしていたところと偶然出会い、
面接をしてもらい昨日正式に決まりました。
(経緯を書くともっと長いのですが)
自分の場合特にこの一年半、
いろんな先生にお世話になり、
中越先生のプログラムとカウンセリングも
非常にお世話になりました。
ありがとうございました。」
=======カウンセラー中越のコメント=======
この事例紹介では、
3、4回のカウンセリングに見えますが、
実際にはもっと回数を重ねています。
3年近く、
好きという気持ちがわからなくて、
悩んでおられたKさん。
最初に僕のところにこられてから、
たった4ヶ月でやりたいことへの一歩を、
踏み出すことができました。
もちろん、僕のところへ来る前に、
3年ほど通われていたカウンセラーの方々の力も、
とても大きかったのだと思います。
僕のところにきて急に話が展開したのは、
僕の能力が特別高いというよりも、
タイミングが良かったのだと思います。
ですが、どちらにせよこれは、
僕たちカウンセラーの能力というより、
Kさんに問題解決能力が十分に眠っていた、
そう考えたほうが自然だと思います。
今改めてこのカウンセリングを振り返ると、
自分で決めて行動するということを、
僕は促していたに過ぎません。
何らかの事情でいままでの人生で、
その問題解決能力が眠っていた。
カウンセリングによって、
眠っていた解決能力が目覚めた。
そう考えるのが一番自然です。
なんせそれらを実際に行動したのは、
すべてKさん本人なのですから。
それにこれはただの僕の推測ですが、
Kさんは僕のところへくる前から、
グリーンキーパには憧れていたと思います。
やりたいことに挑戦する不安から、
その憧れを封印していたのかもしれません。
人生の中で何か行き詰まってしまう。
そんなことは誰にでも必ずあることです。
そんなときほんの少し促すことで、
本来の力を取り戻してもらうことが、
僕たちの仕事だと思います。
Kさん、ご協力ありがとうございました。
これからも芝生を守り続けてくださいね。
応援しています。
自力でやりたいことを見つけたい?
そんな方はこちらをへどうぞ!
https://happy-career.com/stepup.html
今回のポイント
★憧れてるっていっちゃいましたから。
★問題解決能力は眠っている!
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■7 編集後記
布団を干していたら大雨が降ってきました。
でも、危機一髪で取り込みました(^_^)
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